若手作家のプロモーション?ビデオ
岸本 康
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欧米の美術館(こういう言い方は、古めかしくも思えますが)では、映像をプレスレリース用やスポンサー獲得の手段として制作している所が増えて来ています。音楽業界では80年代にMTVで当り前の存在になった、いわゆるプロモーションビデオに近い存在です。
日本では、展覧会の展示の補助説明用に制作されたりするケースはありますが、作家や展覧会のプロモーション的なものはあまり前例がありません。作家を紹介するには、作品やインタビューなど様々な映像素材の調達から始まるので、良いものを作るためにはそれなりの時間も費用もかかってしまいます。そんな事で、私の知る限り、ほとんど国内では制作されていません。
勿論、良いものができれば、展覧会の事前にどんな作家がどんなコンセプトで作品を制作しているのかが理解出来て、まだ知られていない作家に取っては、一つのチャンスにもなって来る訳です。
海外の美術館で制作されている理由はスポンサーへの説得手段でもありますが、実は収客動員にも一役買っているそうです。ニュース番組などで事前に展覧会を扱ってもらうためには、映像素材があることが条件になって来ます。オープンしてからの取材では事前の噂作りにならず、動員力差が出る。そこで、制作したビデオから時間に制限を付けて放映用として貸し出しています。一般に対する告知効果が、チラシなどのテキスト情報に比べて凝縮されていることと、いわゆる文化事業のため、展覧会の情報放送はどの局も勿論、無償でニュースなどのコーナーで流す訳です。
こんな事をして、本当に採算が合うのかどうかまではわかりませんが、最近の美術館のプロダクション部門の一つの仕事となって来ている訳ですから、効果があるのだと思います。ちなみに国内の場合でも、某美術番組の展覧会紹介のコーナーで扱われると入場者数が飛躍的に伸びるという事を聞きますので、効果は確かなものなのでしょう。
そんな話しを聞きつけて、「是非、作りたい。」と無理な話しを持って来られたのが、神戸アートビレッジセンターの学芸員の木ノ下さんです。
毎年恒例のアート・アニュアルという20代の作家活動を始めたばかりの人を集めたグループ展の作家紹介ビデオを作りたいというお話しでした。木ノ下さんは、95年の阪神アートプロジェクトにジョルジュ・ルースの制作ボランティアとして参加されていて、木ノ下さんの熱心さは良く承知していましたので、予算が十分じゃないとか言って御断わりする訳にも行かず、やるとなったら今後のたたき台になるくらいのものをと、私もいつの間にか、彼女たちの意気込みに流されつつ制作が始まりました。
アート・アニュアルは、水戸芸のアニュアルや兵庫近美のアート・ナウよりさらに若い年齢層をターゲットにしていますので、ほとんどの出品作家は狭い現代美術界の中でも知られていない人がほとんどです。如何にして、彼等の魅力の糸口を伝えるか・・・。
アート・ドキュメンタリーのセオリーでは、作品を見た人が、作品の制作行程や、作家そのものに興味を持つという事から、それに答える形で映像が構成されるものが多のですが、今回はまだ、ビデオを見る人は作品を見ていない訳ですから、まず、どんなタイプの作品をどんな人が作っているか知ってもらうという事から始まります。そして、彼等の興味がどんなところにあるのかが、日常空間の画からも伝わる様に、インタビューの場所はできるだけ「らしい」場所を選んでもらいました。自宅、制作現場、夜の街角、公園、プラモデル屋、本屋、ガード下、歩道橋の上、車の中等、ちょっと贅沢な構成です。
このアート・アニュアルの今年のタイトルは、"art port"で、エアポートの様に飛行機が集まる場としてギャラリーを設定しています。このプランは、演出設計?作家として参加の谷本 研さんによるものです。カラーで御見せ出来ないのが残念ですが、下のロゴもチラシも彼のデザインでちょっと変わったものになっていると思います。ビデオの冒頭はそんな訳で、飛行機が着陸します。
結果は見ての御楽しみです。13名の作家を約30分の中で次々に紹介して行きます。ビデオは勿論、展覧会でも御覧頂けます。
お問い合わせ:神戸アートビレッジセンター tel: 078-512-5500
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