アナログ・コンポーネントと
デジタル圧縮技術
今世紀中はアナログ・コンポーネント(ベータカムSP)の収録を考えていたが、デジタル技術の進化は速く、とうとう撮影関係を中心に機材のデジタル化を始めた。
収録をデジタル化した理由は、画質の向上、テープの小型化による保存スペースの確保、編集時のドロップアウトからの開放など様々な要素がある。一言でデジタルと言っても、家庭用の1/5圧縮のDVフォーマットから放送用の非圧縮までが世の中に混在していて、10種類近くのデジタルフォーマットが制作分野で使われている。
ウーファーで採用したデジタルフォーマットはDVCPRO50という松下電器の開発した1/3.3圧縮の放送用フォーマットである。これに近いものとして、ソニーのデジタルベーカム、ビクターのデジタルSなどがあるが、上位や下位のフォーマットとの親和性や、テープの大きさ、ランニングコスト等、美術作品を美しく、しかも機動性良く撮ることができるフォーマットとして選択した。DVCPRO50は、DVCPROの上位互換であり、DVCPRO50のレコーダーはスイッチャブルでDVCPROも選択が出来る。
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テープサイズの比較
左からベータカムL、ベータカムS、
VHS、DVCPRO-L、DVCPRO-M
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美術館のフォーマットは?
今後、美術館のベーシックフォーマットがどのように変わるかというのは、まだ分からない。ヨーロッパもアメリカも基本的に、素材の受け渡しは、現在もベータカムSPで行っている。しかし、アナログの場合、NTSCからPALの変換に大変コストがかかる事や、テープが大きい事などから、近くデジタル化される事は確かだ。しかし丁度どこの国も、地上波がデジタル信号に変わる時期を向かえて、放送局が制作のVTRをデジタル化している最中であり、そのあたりが確立されてから余波が美術館などへも届いて、フォーマットが決められるのではないかと思う。
日本の美術館では、上映用にせっかく良いプロジェクターがあっても、送りはVHSだったりする事が多い。今後のデジタル化では、横の繋がりを持ってフォーマットを決めていただければと思っている。
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画質を追及したカメラシステム
重量を多少犠牲にしている
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ウーファーの撮影システム
カメラ部は池上通信のHC-400、標準のレンズはキャノンのJ15a、レコーダー部が松下のAJ-D90。DVCPRO50の記録が可能。レコーダー部を変えるとベータカムSP収録も可能。
今回の機材導入で、画質向上は勿論のこと、照明が暗いが雰囲気を残さねばならないインスタレーションの撮影などで威力を発揮する。そういう悪条件の撮影は機会としては少ないし、作品としても特殊なものになるのだが・・・。
一言で「画質」と言っても抽象的だが、総じて美しく残せるための機材であり、これを扱う技術と体力、そして美術作品を撮るセンスが揃って始めて、画質と呼ぶものが生まれるのではないかと考えている。
(1999.10 きしもと)
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