HIROSHI SUGIMOTO: VISIONS IN MY MIND 杉本博司

 写真家 杉本博司(1948~)は、30年に渡り現代写真の世界に強い影響を与え続けてきた。毎回異なるテーマを追求し、緻密なプロトコルによって制作される彼のミニマルな白黒のイメージは、沈黙、明瞭、無にまつわるスタディーである。1970年以降アメリカに在住する杉本は、極東の美学と西洋モダニズムに端を発する技術と主題を融合する。最も知られている作品シリーズは、アメリカ自然史博物館の動物を収めた「Dioramas(ジオラマ)」、ドライブイン・シアターや1920年代に建てられた豪華な映画館のスクリーンを収めた「Theaters(劇場)」、詩的でミニマルな「Seascapes(海景)」、そして歴史的に重要な建築物をピントをぼかして画面に収める「Architecture(建築)」である。杉本の作品は、時間と空間、存在と不在、現実と幻想についての瞑想録とも言える。

 この映像では、作品の撮影風景、本人によるアトリエの紹介、展覧会の準備風景などを交えて、インタビューや展覧会でのギャラリートークを通して、杉本博司作品のコンセプトを紐解いてゆく。  作品制作のきっかけやエピソード、幼少時代に鉄道の写真を撮りだしたカメラとの出会い・・・。
杉本博司ファン待望のドキュメンタリー。

For thirty years, Japanese photographer Hiroshi Sugimoto (b. 1948) has made a strong impact on contemporary photography. His minimalist black-and-white images, each exploring a different theme and created according to a precise protocol, are studies in silence, clarity and emptiness. Sugimoto, a resident of the United States since 1970, unites Far Eastern aesthetics with techniques and themes derived from Western modernity. Among his best-known series of photographs are Dioramas, animal scenes shot in natural history museums; Theaters, images of drive-ins and luxurious theatres of the 1920s converted into movie houses; Seascapes, poetic and minimalist evocations of marine landscapes;and Architecture, out-of-focus photographs of historically important buildings. Sugamoto’s works can be seen as meditations on time and space, presence and absence, reality and illusion. A major retrospective of his works is being held in Germany, Austria and Switzerland in 2007-2008.

WORKS

収録されている杉本博司作品の紹介(写真は部分です。紹介文・岸本 康)

Dioramas ジオラマ

 アメリカ自然史博物館の古生物や古代人がいる風景をジオラマにした展示をを撮影したシリーズ。写されたものは、本物であるのか、ないのかという写真はいつでも真実を写すと基本概念を覆すことを、直球的な美を通して提示した作品。

Theaters 劇場

 映画を上映している映画館を撮影した作品。アメリカ各地の劇場やドライブインシアターを訪れ、映画が1本上映される間、露光し、その結果、映画の映ったはずのスクリーンは真っ白になった。写真とは決定的瞬間と思われがちであるが、それとは対照的な時間の経過を表現したシリーズ。

Seascapes 海景

 幼少の頃眺めた車窓からの水平線が、自分はどこから来たのか、そしてどこへ行くのかという自覚をもたらしたという。8X10カメラで撮影された世界の様々な海は、すべて水平線が中央にくるように撮られ、構図は同じあるが、勿論全てが異なる。

Architecture 建築

 世界の記念碑的なモダニズム建築を、フォーカスの焦点を無限の倍にして撮影た作品。ピントは規則正しくぼかされ、映し出された画面には鋭い個性のある建築だけが残される。建物におけるモダニズムを見つめたシリーズ。

Portraits ポートレイト

 偉人や有名人たちの蝋人形を撮影した作品。コピーされたものをさらに写真でコピーすることによって、何がオリジナルで何がコピーなのかが分らなくなる感覚が奇妙で興味深いと言う。写真によって、生命のないものに命を蘇らすことに挑戦したシリーズ。

Lightning Fields
ライトニング・フィールド

 カメラを一切使わずに撮影?された最新作。冬のある日、静電気でだめになったフィルムを現像したら面白い形が写っていた。これを意図的に作り出したシリーズ。

杉本さんに出会う

 杉本さんの声を初めて聞いたのは、多分、90年代に作られたフランスのドキュメンタリー、コンタクトだったと思う。それまでにも作品を見ることはあったが、その映像の中での話し振りがとても爽やかで快活な感じを受けた。が、実はそれはそこに映し出された海景の作品から来るものだったのかも知れない。その映像作品では、声の出演で本人の顔は出てこなかった。

 それから数年後、ご本人にニューヨークでお会いするチャンスがあり、その話しぶりから以前のイメージは大きく崩れ、とても面白い人として強い記憶に残った。それは、彼の作品に現れている研ぎすまされた感覚と同様に、何事においても鋭い感性で見ている日常の美学ともいえる楽しさがあふれていることによるものだと思っている。

 そんな杉本さんを、いつかチャンスがあれば、撮ってみたい作家だと思っていたら、このドキュメンタリーHiroshi Sugimoto - Visions in My Mindに先を超された。監督はマリア・アンナ・タピエナ。以前に当社で日本語版を制作したマシュー・バーニーのドキュメンタリーも彼女の作品だ。WDRはドイツの公共放送で、この映像も番組用に作られているが、ナレーションや音楽はなく、作家の語りと映像だけで構成されている。 この作品、Visions in My Mindは、杉本さんの作品を体験する人への道案内として、そしてまた彼の人間的な側面も感じることができる最初のドキュメンタリーだと思う。
 この映像であなたも杉本さんと出会う事になる。
                     ウーファー・アート・ドキュメンタリー 岸本 康

HIROSHI SUGIMOTO : VISIONS IN MY MIND

2007年 監督・Maria Anna Tappeiner
本編 43分
英語・日本語字幕

HIROSHI SUGIMOTO VISIONS IN MY MIND

Directed by Maria Anna Tappeiner
43min. 
Duits/2007/English Japanese subtitles
Mpeg2 / COLOR / 43min. / RegionALL

この作品はDVDでの販売のみになります
ATTENTION we have the license to sell this DVD only in Japan not for any other countries. (c)WDR

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