imomushi : tabaimo -2010- 芋蟲 束芋
前作 imo-la から3年、束芋のドキュメンタリー第4弾
imo-laをリリースした2007年の秋、束芋はロンドンの北の街、ヨークでシャネルのモバイルアートに出品するat the bottomのプロジェクションテストを行なっていた。前年から構想していた作品の形がようやく見え出した。
今回のストーリーはここから始まる。2007年の年末に横浜美術館でGoth展に参加、2008年はニューヨークのジェームス・コーハンでの個展、ハラ・ミュージアム・アークの真夜中の海の新しい展示、そしてモバイルアートが香港をスタートとして東京、ニューヨークを巡回。秋にはデンマークのルイジアナ美術館の「マンガ」というグループ展に参加、ギャラリー小柳の個展を経て、翌2009年はストックホルム近代美術館で個展。そして12月には横浜美術館で始った「断面の世代」へと続いて行く。
また2008年10月からシンガポールの版画工房STPIに3回の滞在制作を経て完成した作品を2010年にら発表、2010年は、フィアデルフィア美術館のグループ展、ニューヨークの601 Artspaceでの個展、ロンドンのパラソルユニットの個展を経て国立国際美術館の「断面の世代」。今回のドキュメンタリーではこのロンドン、パラソルユニットあたりまでを束芋の回想によるロードムービーとしてまとめた。
作家として10年目を迎えたこの3年間の活動を展示風景やそのメイキングを交えて振り返る。このDVDでは、本編に登場するインスタレーションを作品別に全編収録(11作品)。また旧作に関しても展示方法が変ったものに関しては再収録した。加えて本編に未収録の展覧会会場と、新作に関する設営のメイキングを作品別に収録(9作品)。立込みやプロジェクターの設置などを紹介。
Tabaimo (b.1975) converts her hand-drawn images into animation on a computer and incorporates them into installations using multi-projection and other means of expression. In 2009, 10 years after her debut, her major solo exhibition : “DANMEN” was shown at Yokohama Museum of Art and at The National Museum of Art, Osaka (2010). The film documents the three years prior to the exhibition and includes interviews in which she reflects on each project.
Featuring Chanel’s “MOBILE ART” , “Manga!” at Louisiana Museum of Contemporary Art, her solo exhibition at Moderna Museet and her residency at the Singapore Tyler Print Institute in Singapore, the film contains 11 works of the artist as well as their production process and shows how her large installation comes into being.
Tabaimo has been selected to represent Japan at the 2011 Venice Biennale.
作品紹介
アーカイブとして収録した束芋の近作8作品についての概要を紹介。(文・湯山ななえ)
at the bottom, 2007
ChanelのMobile Artという展覧会で発表した作品。鞄というモチーフから出来た作品。擂り鉢状のスクリーンをのぞき込む様に見る。Mobile Art展ではヘッドフォンを付けて各作品の解説のような朗読を聞きながら見るというスタイルだったが、束芋の作品はあえて無音で見せた。そのためサイレントで収録。
ginyo-ru, 2006
デンマークのオーフス美術館で初めて発表し、その後、東京、大阪で展示し少しずつ完成度を高めた完成型の横浜での展示。スクリーンの設置を美しく仕上げ、6台のプロジェクターによる投影のつなぎ目を無くした。前作のドキュメンタリーimo-laではこの作品について詳しく語っている。
真夜中の海 midnight sea, 2006-2008
2006年の原美術館の個展で発表した作品の進化形。2007年のカルティエでは天上に投影したが、この2008年のハラ・ミュージアム・アークのコレクション展では、鏡を使って大海原のような空間に仕立てた。2009年のストックホルム美術館でもこのミラーバージョンで展示。
団地層 Apartment Strata, 2009
個展「断面の世代」のイントロ的な作品として世代というテーマから団地をイメージし、その内部から者があふれ出すという情景が繰り返し続く。横浜美術館ではメインの高さ8mのスクリーンの左右の壁面に直接投影した3プロジェクションのインスタレーションとして展示。
惡人 akunin, 2006-2007
朝日新聞に連載された吉田修一の小説「惡人」の挿し絵の全原画ドローイングと、その一部を動画に置き換えたインスタレーション。動画化されたドローイングは部分的に彩色されてゆく。また横浜美術館の展示では壁面にも直接ドローイングを描いた。
油断髪 yudangami, 2009
小説「惡人」の中から1人の人物、金子美保をモチーフにした作品。高さ4m、直径5mの半円筒形のスクリーンにモノクロで髪の毛が映し出され、アニメーションが展開する。サウンドは作品「お化け屋敷」でも音楽を制作をしたTucker。2010年のロンドン、パラソル・ユニットでも展示。
団断 danDAN, 2009年
団地の一室を天上の上から見た感覚にさせる3面のスクリーンを縦向けに開いた形状の作品。モチーフは1985年の豊田商事事件から得ている。またそのきっかけになった劇団ワンダリング・パーティーの演劇Total eclipseも横浜美術館で再演され本編で少し紹介している。
ちぎれちぎれ fragment, 2009
トンネル状のスクリーンとその手前の天上に映し出された映像が鏡で反射されることによってトリッキーな空間を作り出した。束芋も彫刻的作品だと次のように語っている。「個を取り囲む世界と比べると物理的には小さい存在である個。しかし、個の想像世界の広がりは物理世界を凌駕する。」
BLOW, 2009
半径4mの傾斜のランページ状のスクリーンに広がる映像の上に鑑賞者が入り込んで観る作品。水面下とその上の部分を描き、個の内側から外に向けて発散されるものを表現している。
にっぽんの台所 Japanese Kitchin, 1999
束芋が大学の卒業作品展で発表した作家としての起点となる作品。2010年のパラソル・ユニットでの個展で展示されたものを収録。
guignorama, 2007
2007年の原美術館で発表した時には、窓の外の円筒スクリーンを設置して投影し、日没後にしか観られなかった作品を室内用にHD化して2010年パラソル・ユニットでの個展で展示。同年、ギャラリー小柳の個展でも展示。
展覧会メイキング
DVDの付録として、本編では紹介できなかった展覧会などを収録した。(文・湯山ななえ)
Singapore Tyler Print Institute 2010 Singapore
シンガポールの版画工房STPIで2008年10月から3回の滞在制作を経て完成した作品を2010年3月に展覧会で発表した。プリントの技法だけでなく、紙造りから様々なサポートを受けて作られた作品は新境地を開いた。
JAMES COHAN GALLERY 2008 New York
この展覧会では、「公衆便女」と「お化け屋敷」の映像インスタレーションの他にドローイングと壁に直接書き込むドローイングを組み合わせた空間を制作。この映像はそのメイキングも交えて紹介。
「ハウス」と題された展覧会では2007年ベネチアビエンナーレのイタリア館で展示したdoelfullhouseの展示とhouseをテーマにしたドローイングを展示。
making Apartment Strata 2009 Yokohama Museum of Art
横浜美術館のエントランスに設置した3スクリーンのインスタレーションの展示風景。センターの高さ8mのスクリーンは、明るさを稼ぐため2台のプロジェクターを重ねて投影。またエスカレーター前の壁の凹みに設置した映像は建物に合わせて切り取るためのマスクを事前に制作してこの場所でしか見られない形状にした。
making akunin 2009 Yokohama Museum of Art
ドローイングの設置風景、照明、壁に直接ペイントするドローイングの制作風景
making yudangami 2009 Yokohama Museum of Art
プロジェクターの設置、調整風景など。4つのプロジェクターを円筒型のスクリーンに向け縦向けに配置して、1つの画面を構成している。
making danDAN 2009 Yokohama Museum of Art
3面のスクリーンの設置、プロジェクターの設置など。
making fragment 2009 Yokohama Museum of Art
半径4mの傾斜のランページ状のスクリーンに広がる映像の上に鑑賞者が入り込んで観る作品。水面下とその上の部分を描き、個の内側から外に向けて発散されるものを表現している。
making BLOW 2009 Yokohama Museum of Art
トンネル状のスクリーンの設置、プロジェクターの設置など。
imomushi : tabaimo -2010-
2010年 監督・岸本 康
imomushi 本編映像 47分 日本語・English Subtitles
作品の記録映像約49分(11作品)
展覧会、メイキング 約35分(9作品)