中川佳宣(Yoshinobu Nakagawa b.1964)は一貫して絵画とも立体とも言えない作品を紙や布を材料として作り続けてきた。Mist of Seeds:は彼の3つ目の記録映像として、近作を中心に制作風景を交えてそのコンセプトを言葉を使わず表現している。人が作り出すものは人工的で自然の中に放り出されたとき、それは弱いものとなったり、自然には馴染まないと感じる事が多いが、本作品ではあえて自然の中で作品を設置して眺めるという実験的インスタレーションに挑んだ。
人の頭のどこかに残る自然の原風景の中に見た様な形や色、空気の流れ、言語では語れないその気分を映像として、中川の30年を越えた作家活動の記録とした。

中川佳宣を描いた前作の「麓に住む」をモントリオールの映画祭に出した時に一緒の枠で上映した監督から「So peaceful」と言われた。その時私はその意味をまだよく理解してなかったのだと12年以上経って思う。絵画でも彫刻でも無い中川の作品にはその物体自体が自然を感じさすものが多いが、それらを実際に自然の中に展示して観てみたいと思うようになった。美しいホワイトキューブで守られた中ではなく、空気や水や光が変化する山の中でそれをやってみたいという想いは作家本人にもあったのかも知れない。この映像には言葉はなく、そこに至るエピソードの記録として制作した。さらにピースフルになっただろうか。

2007 「roots - 光の根」
ノマル・プロジェクトスペース cube & loft, 大阪

2013 「萌芽」(Coppicing)
タグチファインアート, 東京

2015 「原器 Origin / Figure」
ギャラリーノマル, 大阪

2015 「Book of days」
大阪芸術大学図書館

2017年 出演・中川佳宣 監督・岸本 康
音楽・Chris Zabriskie
Mist of Seeds 本編 22分
アーカイブ(展覧会の展示記録)4本 22分

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