veni-imo: TABAIMO teleco-soup, 2011 束芋 ベネチア・ビエンナーレ

この会場でしか出来なかった
18台のプロジェクターを使った
巨大なインスタレーション作品
「teleco-soup」の全貌を収録した
ベネチア・ビエンナーレへの軌跡である。

2009年から2011年にかけて連続して大型の展覧会を開く事になった束芋。 第54回ベネチア・ビエンナーレ日本館代表作家に選ばれたからだ。 ちょうど、個展「断面の世代」が横浜美術館と国立国際美術館で巡回中であった。 その会期が終わらぬ間に、ベネチア・ビエンナーレに向けて11ヶ月間の活動が休む暇なく始まった。

日本館の特殊な建物に頭を悩ませ、構想し、それをチームで作り上げていく行程をインタビューと供にたどる。 「構造が足かせになるようであれば・・・」 「一つ一つの日本館の特徴を捉えていって・・・」 自分の世界感とその空間を見事に組み合わせて行く。 「空間や機会が与えられ、それに多くの方々に支えられて協力してもらって・・・」 ベネチアを乗り切った束芋であるが、彼女にとっていかにこのビエンナーレがプレシャーであったかは、この記録映像を見てもらえばわかるだろう。

「teleco-soup」、この不思議なタイトルはもちろん束芋の造語で、それについても本人が語る。

Tabaimo (b.1975) converts her hand-drawn images into animation on a computer and incorporates them into installations using multi-projection and other means of expression. The work documents her large multimedia installation, teleco-soup, at The 54th Venice Biennale (Japanese Pavilion).

With the artist interview, it also reflects the 11 month production process of the work, integrating 18 projections, that was only possible at this venue.

制作記

「veni-imo」は2011年のベネチア・ビエンナーレの日本館に展示された束芋のインスタレーションの記録である。「teleco-soup」と題されたインスタレーションは、高床式の日本館の建物の屋内と屋外を使い、それらが一体化した作品になっている。日本館の床には元々中央に穴が開いていて、それを井戸のようにして、室外で見せるスクリーンを設置した。その映像を室内側からも覗いて見えるようにし、映像の全てが同期進行する大掛かりな作品となった。

 ベネチア・ビエンナーレの日本館で発表する事は日本の代表である。それは美術のオリンピックと言われるほどに各国は総力を上げて展示に挑む。日本ではこの大イベントが年度行事的な位置づけでしかなく、作家が選定されるのは開催のわずか1年前、そこから下見が始まる。この短期間に制作から設置までを行い、それを開催期間の6ヶ月間維持するというのは、インスタレーションを制作する作家にとっては簡単なことではない。この貴重すぎる11ヶ月の準備期間の経験と、もう再現出来ない作品を資料や束芋のインタビューと共に記録映像で残そうと決めた。

 人間の視野で見ていても数回見ないと理解できない作品を、カメラのレンズを通して切り取り編集して、ドキュメンタリーとして見せる事はとても難しいと思った。また、暗闇から明るいイメージまで大きな輝度差があることも撮影するカメラの質が問われる厳しい条件だった。6月のオープン時に撮影を行なったが、もっと感度が高く良いカメラで撮影が出来ればと実感した。そんな事もあって、秋頃にカメラを新調し、再びベニスへ。11月の最終週に間に合って撮影を終える事ができた。作品の全景シーンはほとんどこのカメラで撮影したものを使っている。

 作品は屋外も使っていたので、初夏から晩秋へと季節で見え方が変化し、秋口の日没時や夜の風景も奇麗だった。その経験から本編では時間帯を変えて作品が約3回流れるように構成にした。また、屋内外の映像がどのようにリンクしていたかを検証できるように、追加トラックでは1画面で両映像を見せて繋がりが理解できるようにした。

 2004年から私は束芋の技術担当として機材の選定から設置、それに合わせた映像に関する様々な事をサポートしている。今回のビエンナーレも展示優先、作品の完成が最重要課題としてきた。その結果、制作途中の映像素材が少なくなってしまったが、施工して下さった大工さんや関係者から写真を借りて、メイキングの様子や現場の雰囲気が伝わるように編集ができ、完成した。

 実際に「teleco-soup」をベニスで体験した方にはそれが蘇り、初めて見る方には少しでもそれがどんな作品であったかがお伝えできればと思う。また将来ベネチア・ビエンナーレで展示される方に、何かのヒントになれば幸いである。

ウーファー・アート・ドキュメンタリー 岸本 康

veni-imo : TABAIMO teleco-soup, 2011

出演・束芋 監督・岸本康
2012年 日本語・English Subtitles
veni-imo 本編 26分
追加トラック 5分30秒 室内と屋外の映像を1画面に編集してどのようにリンクされていたかを再現

AmazonでのDVD販売

veni-imo
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