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制作記、コラム
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アート・ドキュメンタリーという言葉を聞いて、日本でどれだけの人がピーンと来て下さるのだろうかと考えると、まだまだマイナーなジャンルとしての存在でしかない状況を残念に思っています。毎年、芸術系大学の新入生を対象に「マネー・マン」等の現代のアート・ドキュメンタリーを上映すると、必ず「こんな世界があったのか」という反応が返り、彼等が想像していた解説的な美術教育ビデオとの違いに初めて気付くのです。日常の生活で映像情報というものが氾濫していて全てを見ている気にさせられてしまっていますが、実は努力なしには見られないものも多いという現実あるのです。

しかし、日本のアート・ドキュメンタリーに関して言うと、テレビ番組を中心に数多く制作されてはいますが、欧米のそれとは性格が異なりいわゆる解説的、教育的な物が多いのが現実です。しかも、ある程度価値の定まった作品や作家を描いたものが多く、斬新であったり、あるいは価値の定まったものも、定まるまでの映像はありません。

1997年にモントリオールで開催された国際美術映像フェスティバルに参加したフィルムの中に日本の芸術を描いたものが6本ありましたが、5本が海外の監督によって作られたものでした。中には60年代の日本の現代美術や建築を追いかけたものもあり、日本人がまだ重要だと考えていなかった頃に外国人によって記録されていたフィルムを見て感銘を受けると同時に、他の作品で現代の日本の芸術を外国人の視点で神秘的に描き過ぎている作品に対しては、多少危機感も持ちました。

日本のアート・ドキュメンタリーの低迷の一つの原因は、人の心を動かす映像作品群が出てきていなかった事だと思っています。また、記録という意味で、今となっては貴重と思われる数々のアートシーンの映像がありません。これらはその当時に日本に文化的な事に対する余裕がなかったという歴史的な事だけではなく、現在も続いている事なのです。
 そんな混沌とした状況を少しでも変えて行きたいという思いが、「アート・ドキュメンター・プロジェクト」の基本的な考えです。

アート・ドキュメンタリー作品の輩出と共に内外の様々な情報の入手発信、また、アート・ドキュメンタリーの制作を始められる方々との連携や、公開等の普及活動にも幅広く対応して行ければと考えております。

A.D.P.代表 岸本 康


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