hanabi-ra
2003|Approx. 4’24”
1面スクリーンで音の無い作品。黒いカラスのような鳥たちが飛び交った先に首の無い男性の後ろ姿が投影される。彼は、色とりどりの菊の刺青を全身にまとっている。その菊の花びらが、ひとつまたひとつと散っていく。一匹の鯉が花の間を泳いでいく。はらはらと次第に勢いを増しながら散る花びら。すべての花が散った後、男性の指が落ちはじめる。手、腕、首に続き、胴体も花びらと同様にひらひらと散る。一匹の蛾が横切る。後に残るのは、葉と枝ばかりである。
撮影場所:キリンプラザ大阪、2003年
ギニョる|Ginyo-ru
2005|Approx. 5’45”
天井から吊られた360度の筒型スクリーンに映像が投影される大型インスタレーション。円筒の中に入りスクリーンに取り囲まれる形、あるいは外からスクリーンを眺める形と様々な角度から鑑賞することができる。
タイトルは、フランス語で指人形を意味する「ギニョル (guignol)」に由来する。黒い画面にいくつか合体したような白い手が浮かび上がる。まるで生き物であるかの如く形を変えながらうごめく手足。いくつも現れて、時には互いをつかみあいもつれあう。ときおりネオンの明かりのように三原色に色づき、その血管をあらわにする。音を立てて登場した戦車型のミシンが、手の切れ目を縫い合わせる。水泡が現れては消える。画面いっぱいにうごめいていた手が消えた後、水泡から出てきた虫がふらふらと飛び去っていく。
アトピー性皮膚炎に長年悩まされてきた束芋が、自らの手をモチーフにして紡ぎだした作品。
撮影場所:AroS Aarhus Kunstmuseum(デンマーク)、 2005年
真夜中の海|midnight sea
2006|Approx. 4’42”
原美術館の吹き抜けの展示室をのぞむ中二階バルコニーを利用した2面スクリーンの作品。 観客はまず黒いカーテンで仕切られた暗く狭い空間に入り、郵便受けのような覗き穴を通して床に投影された映像を垣間みる。その後、階段を上ってバルコニーから映像全体を見下ろす。カルティエ現代美術財団では、テントの天井にスクリーンが設置され、観客はテントの中に入って傾斜した床に体を横たえて鑑賞する展示形式をとった。
打ち返す波の音が聞こえてくる中、海中にひそむ内蔵が暗闇にぼんやりと浮かぶあがる。そこにかぶさるように現れ、次第に勢いを増す波。海を人体にみたてた「真夜中の海」では、水面は皮膚であり、波はこれまでの人生の歩みを示す皺である。海中の内蔵や血管の間を、白い髪の毛(=神の気)が魚のようにすり抜けていく。カミノケは、水面にも姿を現し波間を自在に動き回る。
ストーリーの抽象性に加えて全編モノクロの世界を表現した、束芋の新境地ともいうべき作品。
撮影場所:原美術館、2006年
ギニョラマ|guignorama
2006|Approx. 3’09”
原美術館のサンルームの外にある庭に曲面スクリーンを設置し、中から映像を投影するインスタレーション。
日没後でなければ、投影された映像は見えない。昼間は音と窓枠に、かすかに映る映像から想像するのみである。「ギニョる」と同じ原画を使用しているが、手足以外のモチーフは登場しない。夜に浮かび上がる映像にはガラスの反射も加わって幻想的な雰囲気が漂う。
撮影場所:原美術館、2006年
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