収録されている杉本博司作品の紹介(写真は部分です。紹介文・岸本 康)
Dioramas ジオラマアメリカ自然史博物館の古生物や古代人がいる風景をジオラマにした展示をを撮影したシリーズ。写されたものは、本物であるのか、ないのかという写真はいつでも真実を写すと基本概念を覆すことを、直球的な美を通して提示した作品。 |
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Theaters 劇場映画を上映している映画館を撮影した作品。アメリカ各地の劇場やドライブインシアターを訪れ、映画が1本上映される間、露光し、その結果、映画の映ったはずのスクリーンは真っ白になった。写真とは決定的瞬間と思われがちであるが、それとは対照的な時間の経過を表現したシリーズ。 |
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Seascapes 海景幼少の頃眺めた車窓からの水平線が、自分はどこから来たのか、そしてどこへ行くのかという自覚をもたらしたという。8X10カメラで撮影された世界の様々な海は、すべて水平線が中央にくるように撮られ、構図は同じあるが、勿論全てが異なる。 |
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Architecture 建築世界の記念碑的なモダニズム建築を、フォーカスの焦点を無限の倍にして撮影た作品。ピントは規則正しくぼかされ、映し出された画面には鋭い個性のある建築だけが残される。建物におけるモダニズムを見つめたシリーズ。 |
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Portraits ポートレイト偉人や有名人たちの蝋人形を撮影した作品。コピーされたものをさらに写真でコピーすることによって、何がオリジナルで何がコピーなのかが分らなくなる感覚が奇妙で興味深いと言う。写真によって、生命のないものに命を蘇らすことに挑戦したシリーズ。 |
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Lightning Fields
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杉本さんと出会う
杉本さんの声を初めて聞いたのは、多分、90年代に作られたフランスのドキュメンタリー、コンタクトだったと思う。それまでにも作品を見ることはあったが、その映像の中での話し振りがとても爽やかで快活な感じを受けた。が、実はそれはそこに映し出された海景の作品から来るものだったのかも知れない。その映像作品では、声の出演で本人の顔は出てこなかった。
それから数年後、ご本人にニューヨークでお会いするチャンスがあり、その話しぶりから以前のイメージは大きく崩れ、とても面白い人として強い記憶に残った。それは、彼の作品に現れている研ぎすまされた感覚と同様に、何事においても鋭い感性で見ている日常の美学ともいえる楽しさがあふれていることによるものだと思っている。
そんな杉本さんを、いつかチャンスがあれば、撮ってみたい作家だと思っていたら、このドキュメンタリーHiroshi Sugimoto − Visions in My Mindに先を超された。監督はマリア・アンナ・タピエナ。以前に当社で日本語版を制作したマシュー・バーニーのドキュメンタリーも彼女の作品だ。WDRはドイツの公共放送で、この映像も番組用に作られているが、ナレーションや音楽はなく、作家の語りと映像だけで構成されている。
この作品、Visions in My Mindは、杉本さんの作品を体験する人への道案内として、そしてまた彼の人間的な側面も感じることができる最初のドキュメンタリーだと思う。
この映像であなたも杉本さんと出会う事になる。
ウーファー・アート・ドキュメンタリー 岸本 康
HIROSHI SUGIMOTO : VISIONS IN MY MIND 2007年 監督・Maria Anna Tappeiner |
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